『氷の解けるまで(15話)』大前しでん小説

(父のセリフの続き)

志が全く整わず、聖職に対する自己情操に大きく欠け離れた素行だった。

心掛けが全くなってなかったんだよ。

若僧に偉そうなことを言えたものでなく、外見や履歴で相手を見下していたんだよ。

もっと、自分の子供同然に親身になって言葉を選んで時間を掛けて宮大工の精神を通じて私自身が学んだことの一部始終を丁寧に体ごと接してやれば良かったってね。

ひたすら、猛省ですよ。

あれからは 、母さんや圭子の悲しみを全部前向きに受け止めて生きて行こうってね。

若僧には何も賠償など望まず裁判の結果に従いました。

数年だったと思うが今も服役しているよ。

でも、それでいいじゃないか!こっちにだって事情がある訳だからな、圭子」

圭子は突然号泣し崩れていった。

「圭ちゃん、話の流れでそう言っただけじゃないか。

お父さんは責めてなんかないんだから」

< 続く>