『互いの面影(10話・最終回)』大前しでん小説

「それでは、お待たせして済みませんでしたまた、いつかどこかのトイレで』

「ほんまやね、早く元気になって掃除にかなね」

「さようなら、お体を大事にお元気で」     

「さようなら、有難うね」

良かった

何か胸のモヤモヤが一掃され、心機一転スタートが切れそうな気持ちになった。

あとは母の墓にお参りして本州と一旦、さようならだ。

「横ちゃん、ちょっと食事して帰ろうよ」

「ほんまやね、今日は長い間付き合わせてしまってごめんね」

「全然気にしなくていいのよ。 けど良かったじゃない」

「ほんと、良かったわ。 元気で頑張ってくれることを祈るしかないけどね」

「私は焼き魚定食をお願いします」      

「私も同じもので」

「さっき貰ったプレゼント何なんやろう?」

「ほんまやね、私にも見せてよ」

綺麗なピンクの包紙にブルーのリボンがあしらわれた小包みを破らないようにゆっくりと開けていった。

そうすると何やら熨斗がついていて、そこには次のように記されていた。

「お母さん ありがとう」 山川啓介

あまりの嬉しさに声を失った。そして、暫くすると熨斗の文字が激しく滲み始めた。

(互いの面影 完)