『互いの面影(9話)』大前しでん小説

「それでしたら今年は桜前線が近づくに連れ雨が非常によく降っておりますし、六月には梅雨も控えております。

当店の今年の新企画として早めの雨対策ということで例年と違ったお洒落なアイテムを取り入れました。

こちらが新企画の『レイン・スクエア』と言う商品です。

傘をさしても肩元が濡れてしまい洋服を台無しにしてしまうため、こちらのコットン生地に防水スプレーをかけておいて雨除けのショルダーカバーとなりますので大変お洒落な小物となりますよ。

今年は当店も流行ると見ています!」 

そうか、これなら雨の日でも病院に出掛ける時にお洒落を楽しむことができるではないか。

「これでお願いします」

「お色は?」

そうだな、前掛けのイメージである青色が眼に焼き付いているので。

「ブルーでお願いします」

「承知しました」

「それで熨斗をお願いしたいのです。

それから防水スプレーもお願いします」

「熨斗には何とお書きしましょうか?」

「そうですね、少しお願いがあるのです」

あれから、三〇分くらい待たせてしまっただろうか。

「申し訳ありませんでした」      

「いえいえ、今日は病院も休みなんでね」

「あの、お二人なのに大変失礼なのですが」

「いえいえ、私のことは気になさらずにどうぞ、どうぞ」

「これまで数年にわたって愚痴なんかも聞いてもらって元気に過ごせました、これは是非お似合いになるかと思いますのでこれから身に付けて下さいね」

「えー嬉しい!

なんか、息子にプレゼント貰ったみたい」

それから暫く言葉が無かった。

(互いの面影 続く)